第一次大戦後に開発された4輪装甲車Kfz.13(及び14)はアドラー社製6シリーズ12N-RW(4×2)乗用車のシャシをそのまま流用されるかたちでダイムラー・ベンツ社より量産が開始されたが乗用車輌が原型であったため悪路走破性が非常に悪かった。折りしもヒトラー政権の再軍備宣言がなされるにつけ専用のシャシを使用した新型4輪装甲車が開発されることになった(開発開始は1934年)。「高性能であること」「メンテナンスフリーであること」「生産しやすいこと」「低質ガソリンも使用出来ること」「悪路走破性に優れること」等が開発主旨となり、これを基準に具体的な作業に入った。
シャシの開発はアウト・ウニオン/ホルヒ社で装甲車体の製作はウエーザー・ヒュッテ社により行われ組立はF・シッヒャウ社とニーダーザクセン社で行われた。エンジンは当初ホルヒV型8気筒108型3500cc(75HP/3600rpm)を搭載したが1940〜1943年に製作された車体は3800ccとなっており低速トルク確保に一躍かっている。駆動系は4×4形式(また切り替え式ではあったが4WS機構を持っていた)でリミテッドスリップ・デフ機構付きの前進5速後進5速のミッションをそなえ更に不正地走行用にロー・ギアが採用されている。
シャシはI型、II型の二種類開発されたがII型は重兵員輸送車用でありSd.Kfz 221,222,223,260/261にはI型シャシが使用された。I型II型の違いは機関部位置の違いでI型はリアに配置、II型は前部に配置されていた。
同車輌はフランス戦役等の路上が多い作戦では評価が高かったが悪路走破性に不足がありSd.Kfz
250が充足しはじめた1942年に生産が中止されている(下記記載と違いがあるが戦車マガジン1991年Vol14を参照)。しかしながら手軽に使用出来る車輌であったため連絡・警備用で終戦まで使用された。
Sd.Kfz 221 |
1937年に制式採用された車輌。装甲は8mmでMG34 7.92mm機関銃を備えたオープントップの砲塔を備えている。少数に2.8cmゲルリッヒ砲[2.8cm
sPzB Feldlafette 41](口径漸減砲、ドイツ軍の兵器15-1参照)搭載に改造された車輌もある。乗員は車長と操縦士の2名。無線装置を持たないため、もっぱら指揮官用とされ通信車と組んで機械化もしくは砲兵観測用のコマンドポストとして使用された。生産は1935〜1940年までに339輌。バリエーションも多かったが1941年以降に改造されたもののようで新たに生産されたものでは無い。 |
↑2.8cm sPzB Feldlafette 41を搭載した改造型。他にもPz.B.39対戦車ライフルを装備した車輌の写真も残されている |
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Sd.Kfz 222 |
Sd.Kfz 221のバリエーション。1938年より装甲偵察大隊への配備が開始された。Sd.Kfz
221の武装強化型であり砲塔をシャシいっぱいに広げ20mm機関砲(KwK30のちにKwK38)とMG34 7.92mm機関銃を共通軸に搭載していた。シャシに変更が加えられ(既存のシャシはA型と呼称、これはB型シャシと呼ばれている)エンジンの排気量が3823ccにアップされ馬力も81HPとなった。またブレーキシステムも既存の機械式から油圧作動となっている。また装甲は表面硬化型で車体前面14.5mm(最終的に30mm)、中間部上面6mm、後部及び側面8mm、上面6mm、床5mm、砲塔全面8mm(後期は10mmとなった)。生産は1936〜1943年6月までに989輌。 |
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Sd.Kfz 223 |
Sd.Kfz 222とペアになって行動する車輌として製作。大型の無線機を搭載するために砲塔は7.92mm機関銃を備えた小型のものに戻され折りたたみ式の長方形フレームアンテナが新たに装備されている。シャシは222と同様で当初はIA型で、のちにIB型が使用された。生産は1935〜1944年1月までに550輌とされている。 |
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Sd.Kfz 260/261 |
Sd.Kfz 221をベースとした通信車輌。Sd.Kfz 223は偵察部隊用であったが260/261は通信部隊用として開発された。Sd.Kfz
260はロッド式通信アンテナ、261はフレーム式アンテナを装備。無線機はSd.Kfz 260はFuG.7(超短波無線機、空軍連絡用?)とFuG.Spr.Ger.aでSd.Kfz
261はFuG.Spr.Ger.aとFuG.12(司令部連絡用)であった。武装は乗員用のMP40以外は無武装。生産は1940年11月〜1943年4月までに493輌。 |
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