Panzerkampfwagen "Maus"
『最初に』

１９４２年６月にポルシェ社に開発命令が出された重戦車。ヒトラーの個人的趣味（こう言っても差し支えないと思われる。ヒトラーは重戦車と言うより『陸上軍艦』や『移動要塞』的な車輌完成を望んでいた）とソ連重戦車の情報により開発に着手された。しかし当時各国ともに重戦車の開発はしており特に珍しいわけだは無い。

『主砲と副砲と.......』

武装は主砲にヤクトティーガーと同じ系列の12.8cmKwK44 L/55が装備（計画では15cmKwKの搭載案もあった）され同軸にV号系列と同じ7.5cm KwK L/36.5が装備されていた。また同軸機銃には主砲の射程が伸びたことからMG151/20(20mm機関砲）が装備された。

『試作１号完成っ！.....しかし』

さて命令が出されて約一年後の１９４３年５月に試作車輌（１号車。よく写真が見られる砲塔無し及びダミー砲塔車輌）が完成した。砲塔自体は１９４４年６月に完成したため、それまで各種の走行テストがおこなわれていたと言う。ついで９月に２号車が完成している（後にエンジン火災により放置され再度動くのは1945年４月になってからであった）。

エンジンは水冷タイプのダイムラーベンツMB５０９（１号車）が積まれていたが当初は冷却水の補充、凍結などの心配により空冷にする予定であった。しかし実用化されなかった。２号車にはディーゼルのDB５０７が搭載されていた(エンジン火災によりMB５０９に換装されたという資料有）。

『問題が（＾＾；』

●用兵上の意義に欠けると言う根本的なことはさて置き、動力関係に欠点があった。『エレファント』で採用されたポルシェ博士自慢の『エンジン（エレファントはエンジン２基）と発電機を組み合わせたユニットで発生した電力で後部に２基置かれた走行モーターを駆動する』システムは「始動が容易」「変速操作が楽」程度の利点はあったものの、反面、駆動モーターが複雑で故障しやすい致命的な欠点が有り、なんとか採用されたのはポルシェとヒトラーの親密な関係（ただし理論的にはかなり先進的で有効なシステムであった）によるものとされている。
●写真を見たかたならお判りだろうが、履帯幅が、なんと１１００mmもあり、さらにシュルツェン が車体と一体化していた為、交換がその重量により非常に難しかったという。
●欠点では無いが外形になにも装備品らしいものが付かなかったため、乗員はこの戦車に載るときに梯子が必要であったらしい。

１号車の塗装はダミー砲塔積載時点では『白っぽい』色であったが、後にレッドブラウンの縱縞模様（下地は白？のまま）、砲塔が載せられてからは下地はダークブラウンで凝ったレッドブラウンの縱縞に替えられていたという。

マウスは重量が１８８tもあった為、最初から橋梁通行は諦められており、車体を水密構造にして潜水をしながら渡河することが考えられていた。すなわち、潜水中は対岸に置かれた発電機で電力をケーブル供給されモーターを駆動する方式をとっていた。例えば２次電池を車内に積んでいたらそのまま潜水艦として使える（笑）。ただし乗員の呼吸の問題はあるが.......

『格闘！最後の戦車戦闘団』

試作２輛が完成、９輛が製作途上であったマウスであったが、戦局は、この戦車を待ってくれなかった。ベルリン近郊までせまったソ連軍を迎撃する為に付近の他の残存戦車（ヘッツアーとIV号と言う資料またはV号との資料もあるが何れにせよ混成であったと言うのは間違い無い）と共に急造戦闘団を構成、キュンマースドルフ付近において怒濤のごとくベルリンを目指すソ連軍と交戦、１号車は小破後ソ連軍に捕獲され、２号車は後退後、自爆して果てた。（正確にどちらが捕獲されて、どちらが自爆したのかは解っていない）

２号車はほぼ原型をとどめず破壊されてしまったが、捕獲された１号車は原型が保たれていたためそのままモスクワに運ばれ保管された。戦後西側ではマウスは残存していないと思われていたが１９７０年代にフィンランドのTV局の取材で偶然にカメラに捉えられ、その存在が明らかになっている。（一部資料では「現存しているマウスは１号車と２号車の組み合わせ」との文章もあるが上記写真をみると破壊が凄く、メインはどちらか１輛で不足した部品を片方から取り装着したものと思われる）